映画【フルメタルジャケット】~戦争の狂気~

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公開:1987年

 

スタンリー・キューブリック監督の問題作「フルメタル・ジャケット」です。

序盤ですぐ「あ、この映画、普通じゃないわ」と気がつきます。

前半の重要人物であるハートマン軍曹がとにかく強烈なのです。

 

映画は、過酷な新兵訓練を描いた前半部分と、

ベトナムでの戦闘を描いた後半部分とに、大きく構成が分かれています。

 

この映画の見どころは、何といってもハートマン軍曹による新兵訓練です。

 

鬼!といえるほどの苛烈な教育で、ほとんど虐待レベルの罵倒、体罰、しごきによって新兵たちを徹底的に鍛え上げます。

 

新兵たちは、ハートマン軍曹から浴びせられる下品極まりない罵詈雑言の数々と、暴力によって、人格を否定され、自尊心を破壊され、感情を持つことを禁じられ、服従を強いられ、殺人マシーンへと仕立て上げられていきます。

 

その訓練シーンは、一度観たら忘れられないほどのインパクトがあります。

 

新兵訓練編

冒頭で髪を丸刈りにされる新兵たち。

 

その新兵たちを待ち受けていたのは、鬼軍曹ハートマンによる暴力的な訓練でした。 

 

このハートマン軍曹、とにかく口汚い。

 

前半部分は、ハートマン軍曹の悪口のバリエーションを楽しむパートか、ってくらいに四六時中、誰かをののしってます。

 

一例をあげると、

 

話しかけられたとき以外は口を開くな!口でクソたれる前と後に“サー”と言え!分かったかウジ虫ども!

 

俺は厳しいが公平だ!人種差別は許さん!黒豚、ユダ豚、イタ豚を俺は見下さん!すべて平等に価値がない!

 

まるでそびえ立つクソだな!パパの精〇がシーツのシミになり、ママの割れ目に残ったカスがお前だ!

 

もちろんこれはほんの一例にすぎませんw

 

これ以外にも様々なバリエーションで新兵たちに「言葉の暴力」を浴びせ続けます。

 

 

そんな中、あまりに出来が悪すぎてハートマンから集中砲火を浴びるはめになった、レナードという新兵がいました。

 

その新兵は、肥満体でうすら笑いをしていたことから「ほほえみデブ」と名付けられ、ハートマンから罵倒の限りを尽くされます。

 

そしてあるとき、その「ほほえみデブ」のレナードがやらかします。飲食禁止の営内にドーナツを持ち込み、隠れて食っていたのです。

 

当然、怒り狂うハートマン 。

 

ここでハートマンが与えた罰は「精神攻撃」でした。

 

レナードではなく、それ以外の全員に腕立て伏せの罰を与えたのです。

 

つまりレナードが何かやらかすたびに周りの連帯責任としたのです。

 

当然、周りはだんだんレナードに悪感情を抱くようになります。

 

 

で、ある夜、レナードはリンチに遭います。

 

 

その後レナードは狂人となってしまいます。

 

そしてある夜…

 

ここのレナードの顛末は本当に考えさせられます…。

 

 

ベトナム市街戦編

後半は、前半とはガラリと内容が変わります。

 

前半でハートマンに鍛えられた新兵の一人「ジョーカー」の視点から、ベトナムでの市街地戦が描かれます。

 

ジョーカーが前線に向かうためのヘリに乗り込むと、一緒に乗り合わせた男が、ヘリから一般人をひたすら狙撃するという、狂った奴でした。

 

その男は銃をぶっぱなしながら、

 

逃げる奴はベトコンだ!逃げない奴はよく訓練されたベトコンだ!フゥハハハ!」と豪語。

 

ジョーカーが「よく女子供を撃てるな」と問うと、

 

簡単さ!奴らは動きがノロいからな!HAHAHA!」と返ってくる。

 

ジョーカーはもちろん「よく女子供を撃ち殺して良心が痛まないな」という意味で聞いたのに、このずれた回答。

 

完全にぶっ壊れてます。

 

後編ではおもに市街地戦が描かれますが、その戦闘シーンが非常に淡々としてます。

 

よくあるドンパチ系戦争映画のようなエンタメ要素・カタルシスはなく、なにやらドキュメンタリーでも観てるような感覚になります。

 

なんというか、ひたすらドライなんですよねえ描写が。

 

仲間が死んでいくシーンもあっけない感じです。

 

お涙頂戴的な演出は一切ありません。

 

仲間たちは「SHIT!」と舌打ちしながら、事務的に処理するだけです。

けど、実際に戦場ではそんな感じなんだろうと思います。 

 

 

終盤、ジョーカーのいる部隊は、見通しの悪い市街地でスナイパーに狙撃され、仲間が次々と命を落とします。

 

敵の居場所を突き止め、銃撃を浴びせると、そのスナイパーの正体は少女でした。

 

少女は苦悶の声をあげながら、横たわっています。

 

皆「仲間を殺した奴だ、このままネズミに食わせておけ」と主張します。

 

しかしジョーカーは「このままにはしておけない」と言います。

 

そして少女にピストルを向けます。

 

そして不気味なラストシーン。

 

彼らが戦争を生き伸びて故郷に戻ったとき、果たしてどうなるのか想像すると、

 

暗澹たる気持ちにしかなりません・・・

 

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この映画を観て思うのは「戦争=狂気」ということです。

戦争の狂気を表現する映画としては、トップクラスの作品だと思います。

 

評価:★★★★☆(4/5点)